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伝統と革新が生み出した「ポケモン京菓子」

伝統と革新が生み出した「ポケモン京菓子」 2024.05.10

江戸時代から京都に本店を構える老舗和菓子店「七條甘春堂」とポケモンのコラボレーションによって、四季をテーマにした「ポケモン京菓子」が誕生しました。

 

京菓子とは、京都の地でつくられた伝統的な和菓子のこと。宮廷での儀式や茶道文化とともに、京都独自の文化として発展してきました。あんを使った上生菓子、羊羹など日持ちのする半生菓子、落雁や麩焼き煎餅など水分量の少ない干菓子といった種類があります。一番の特徴は、四季や年中行事にまつわるものが多い点。見た目を楽しんでから味わうことで、季節や情景が思い浮かぶようなお菓子として長く親しまれてきました。

 

一方、ポケモンの中には、四季をイメージさせる生きものがいます。季節の移り変わりを表現する京菓子とポケモンの共通点をうまく表現できれば、双方の新たな魅力を引き出せるかもしれない――。伝統的かつ革新的な京菓子をつくる七條甘春堂と私たちはその想いが重なり、「ポケモン京菓子」の商品化に向けたチャレンジが始まりました。

 

京都市東山区七条にある七條甘春堂の本店

 

七條甘春堂の担当者の多くは、子どもの頃からポケモンに慣れ親しんでいた世代。なかには、ビデオゲーム『ポケットモンスター』シリーズですべてのポケモンを収集し、図鑑をコンプリートするほど遊んでいたという方もいるほどでした。

 

「ポケモン京菓子」の企画が持ち上がった時のことについて、七條甘春堂の担当者は「和菓子の新たな価値をつくれるんじゃないか、という期待感がこみ上げてきました」と、当時の想いを振り返ります。

 

「数十年前まで、日本では和菓子がお菓子の中心でした。しかし、現代社会ではお菓子のジャンルが増え、おいしい商品がどんどん世に出ています。そのため、残念ながら若い世代を中心に、和菓子に馴染みの薄い方が増えています。これからは、和菓子も新しい価値を作っていかなければならない。そういった危機感を持って、私たちは和菓子づくりに取り組んできました。今回の企画は、そんな我々の想いにぴったりだと思ったんです」

 

ポケモン京菓子づくりの過程では、お互いのこだわりや想いを存分に反映できるよう、丁寧なコミュニケーションと試作を重ねました。私たちが提案したのは、四季折々の情景に合いそうなポケモンと、そのポケモンならではの表現方法です。一方、七條甘春堂は、京菓子の種類、味や色のバランス、食材など、和菓子づくりにおける技術の可能性を追求しました。

 

例えば、代表的な京菓子のひとつに上生菓子があります。季節や行事に応じたモチーフを抽象的に表現したお菓子で、あえてすべてを語らない奥ゆかしさが特徴です。

 

七條甘春堂の上生菓子 左から胡蝶、落とし文、紫陽花

 

しかし、上生菓子のデザインがあまりに抽象的すぎると、ポケモンのイメージが具体的に伝わりません。想像力をかきたてるような上生菓子らしさと一目でわかるポケモンらしさのバランスが、京菓子づくりの重要なポイントです。

 

そもそも、上生菓子はその名の通りナマモノで、職人の手作業によって1つ1つ作られるため、気温や環境によって変色しやすいという特徴があります。上生菓子でも一定の品質でポケモンの色を再現するにはどうすれば良いか。アイデアを出し合いながら多くの時間と労力をかけて試作を繰り返し、最終的にこの難しい課題を見事にクリアしました。

 

ダンスポケモンであるオドリドリ(まいまいスタイル)を上生菓子(外郎)で表現

 

ポケモンの担当者は、商品開発のプロセスをこう振り返ります。「京菓子とポケモンは、それぞれ妥協できない世界観があります。そのため、細かな修正依頼やリクエストをしすぎているのではないか……と心配になったこともありました。しかし、七條甘春堂さんの担当者からは『職人さんたちも楽しく作っていますよ』とフォローいただき、細かなこだわりも前向きにとらえてもらえてほっとしました」

 

京菓子の世界では、それぞれのお茶の席に合わせたオーダーメイドのお菓子をつくる文化があります。「今回の商品も、京菓子職人にとっては腕の見せどころでした」と、七條甘春堂の担当者も共同開発の感想を聞かせてくれました。職人からは「ポケモン好きの孫に自分の仕事を見せられるのがうれしい」といった声も。双方で協力し合いながら、前向きに製作を進めることができました。

 

職人が上生菓子を作る様子

 

このようにして完成したのが、「ポケモンとめぐる京菓子の世界」をコンセプトに、春・夏・秋・冬それぞれにちなんだ「ポケモン京菓子」です。第1弾の「秋」シリーズでは、お月見にちなみ、満月の夜に集まって踊るピッピの上生菓子が作られました。そのほか、秋めいた背景にポケモンが描かれた麩焼き煎餅や、職人手作りの木型を用いた秋を感じるピカチュウの落雁も販売されています。

 

手びねりでつくられた上生菓子(外郎)のピッピ

 

ポケモンの担当者が特に印象的だったと話すのは、第2弾の「冬」シリーズで製作したオニゴーリの上生菓子です。豆をまいて鬼を祓う行事の「節分」から連想し、オニゴーリのごつごつとした体には黒豆を使っています。「黒豆を使ったこの表現は、七條甘春堂さんからの提案です。私たちだけでは考えつかない京菓子らしいアイデアのおかげで、とてもユニークなポケモン京菓子が完成しました」と、当時の感動を明かします。

 

淡雪羹で仕上げた上生菓子(かのこ)のオニゴーリ

 

商品の味や見た目はもちろん、その意味や背景をさらに深く味わってもらうため、ポケモン京菓子にはそれぞれの季節行事を解説したリーフレットを同梱しています。いかに京菓子が季節や行事に紐づいており、人々の生活に身近なものなのか。これは、ポケモンを通じて伝えたかった京菓子の魅力のひとつでもあります。

発売初日の七條甘春堂本店前には、ポケモンファンの子どもとその家族、孫へのお土産を買うために並ぶご年配の方々、さらには海外からの観光客など、まだかまだかとウキウキしながら多くの人々が列をなす光景が。それを目の当たりにした私たちは、ポケモン京菓子が想像を大きく超え、幅広い人々に届いたことを実感しました。

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