空港のターミナル、高速道路のサービスエリア、駅の構内……街のさまざまな場所に、ポケモンの自動販売機が設置されているのをご存じでしょうか。
この自販機は、ポケモンの公式グッズが買える「ポケモンスタンド」と、ポケモンカードを販売する「ポケモンカードスタンド」の2種類。商品をもっと身近に購入してもらえる場をつくりたいという想いから生まれました。
現在、ぬいぐるみや雑貨などを取り扱うオフィシャルショップ「ポケモンセンター」は、北海道から沖縄まで国内22店を展開し、海外では台北とシンガポールにも出店。連日多くのポケモンファンが、お気に入りのグッズを探しに訪れる場になっています。
一方で、「ポケモンは知っているけれど、お店に足を運ぶ機会がない」という人もいるようです。「このようなお客様にも、興味をもってもらうにはどうしたらいいのだろう?」この課題への取り組みとして、公式自販機事業がスタートしました。
まず開発を進めたのは「ポケモンスタンド」です。自販機でポケモンセンターのオリジナル商品を販売することで、気軽に手に取ってもらいたいと考えました。
ポケモンセンターが大切にしている理念は、「商品だけでなく、ポケモンの世界観を体験し、思い出を持ち帰ってもらうこと」。無人販売でもこの理念がぶれないようにするために、何をすればよいのか。ポケモンの担当者は、さまざまなアイデアを検討しました。
「一例として、ポケモンスタンドの前を通りかかると、ピカチュウがその人に声をかけるようにしました。『なんだろう?』と気になり、つい足を止めたくなるような演出です。ポケモンのグッズに興味をもっていただける一つのきっかけになればいいな、と」
購入した商品は、スタンド専用にデザインした紙袋に入れて持ち帰れるようにしました。これは 、自動販売機から商品が押し出されるときに袋が潰れないよう、紙の素材やコーティングの厚さを徹底的にこだわり抜いたもの。ここでしか手に入らない特別なショッピングバッグとして、普段使いにもしてもらえたらという想いを込めています。
設置場所 は、テストを重ねながら慎重に見極めました。その結果、現在は多くの人の目に留まる空港や高速道路のサービスエリア、ターミナル駅を中心に設置されています。
特に、反響が大きかったのは空港です。海外からの渡航者が、思いがけず自販機でポケモンに出会えたことを喜び、グッズを手に取る姿が見られました。
ポケモンスタンドに続いて登場したのが「ポケモンカードスタンド」です。この自販機は、ポケモンカードがランダムに5枚封入された「拡張パック」を中心に販売しています。
主に設置したのは駅の構内ですが、この意図について、担当者はこう話します。
「駅は通勤や通学で、さまざまな人が行き交う場所です。例えば、誰かが少し落ち込んでいる日でも、駅でこの自販機を見つけ、欲しいカードを手に入れることができたら、気分が上がることもありますよね。このように、ポケモンが人々の日常に寄り添う存在になってほしいと考えているのです」
ポケモンカードスタンドで買える拡張パックは、2セットで330円(2024年12月現在)。買いやすい値段なのもあってか、通勤中のビジネスパーソンや通学中の学生が、日々のちょっとしたご褒美やお土産として購入しているようです。また、小学生が電車通学の通りがかりにポケモンカードスタンドで新商品を見つけ、下校後に保護者と一緒に買いに来ることも。ポケモンカードスタンドは、日常の中でポケモンが目に留まるきっかけになりつつあるのかもしれません。
ポケモンとの出会いの場を広げるために、ポケモンスタンドとポケモンカードスタンドの新しい設置場所もを検討しています。今後さらにスタンド数を増やしていく計画について、担当者はポジティブな未来を描いています。
「今や、グッズなどの情報はスマートフォンやPCでいくらでも調べられます。そんな時代だからこそ、日々の生活の中で思いがけずポケモンの商品を目にする機会が増え、それをきっかけにポケモンに興味を持ってもらったり、グッズを購入することで日常にちょっとした楽しみが生まれたりするなら、私たちとしてもうれしいですね」
自販機という形だからこそ生まれる、偶発的なポケモンたちとの出会い。この小さな出会いが人々の生活に彩りを添えることを願いながら、ポケモンスタンドとポケモンカードスタンドをさまざまな場所へと展開していきます。