これから始まる空の旅へ向け、安全上の注意とともにワクワク感も一緒に届けたい。2024年8月、そんな想いからANAとポケモンによる新しい機内安全ビデオが生まれました。
飛行機の離陸前に放送される機内安全ビデオ。その映像にポケモンたちが登場する「ANA機内安全ビデオ ポケモン特別版」の制作は、株式会社ポケモンが展開する「そらとぶピカチュウプロジェクト」がきっかけで始まった取り組みです 。ANAは2023年3月よりこのプロジェクトに参画し、国際線特別塗装機「ピカチュウジェットNH」「イーブイジェットNH」の2機を運航していました。
機内安全ビデオは、万が一の事故やトラブルの際に、どう命を守るかを伝える重要なもの。しかし、安全を伝えることが第一優先になるため 、すべてのお客様に最後まで集中して見ていただくのが難しいという課題があったといいます。
「大人から子どもまで、ポケモンは幅広い世代に親しまれている存在です。それを機内安全ビデオとかけ合わせることで、搭乗者の皆様が『見たい』と思えるような映像に仕上がるのではないか。そんな期待がありました」とANAの担当者は企画当初を振り返ります。
しかし、その制作は簡単なものではありませんでした。機内での安全啓発は、国土交通省が定めた指針に沿って、必ず表現しなければいけない要素があります。それらをしっかりと伝えながら、どうポケモンを溶け込ませていくのか。そのバランスには、細心の注意を払いました。
登場するポケモンの選定では「ポケモンそれぞれの個性と 、伝えるべき事項が違和感なくマッチするかどうか」という視点のもとに、知恵を絞りました。
たとえば、シートベルトの着用を説明するシーン。4本の腕が特徴的な二足歩行のポケモン「カイリキー」を出演させる案がでましたが、そのからだの大きさではエコノミークラスの座席には収まらないことがわかりました。そのため、エコノミークラスよりも広いビジネスクラスの座席での、ショルダーベルトの説明に起用しています。
その他にも、緊急時に衝撃に備える姿勢を説明するシーンでは、身を守るために体を丸める「サンド」や硬くなる「トランセル」が選ばれました。
さらに、より多くの人々に親しみを感じてもらえるよう、シリーズの原点である『「ポケットモンスター 赤・緑』」から、最新作『「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』」まで、歴代作品の に登場するポケモンを幅広く登場させています。
機内安全ビデオと併せて制作されたのが「降機ビデオ」です。こちらで この降機ビデオは、機内安全ビデオに登場するピカチュウが飛行機に乗るまでの物語を描いています。空港の至る所に溶け込んでいるさまざまなポケモンたちの様子と合わせて、ANAで働く人々のチームワークやおもてなしの心を表現しました。
リアリティを追求するため、機内シーンは実機を使って撮影しています。さらに、実際の客室乗務員をはじめとするANAのさまざまな部署のスタッフたちもビデオ制作に関わりました。ANA社員から「こんなワクワクするプロジェクトに関われてよかった」との声も挙がっていたといいます。
こうして完成した機内安全・降機ビデオ「ポケモン特別版」は、2024年8月からは「ピカチュウジェットNH」と「イーブイジェットNH」の2機にて、12月からは国内線と国際線の全機(※一部機材を除く )体で放映されています。オンライン上でも注目を集め、YouTubeにアップロードした同動画は合わせて100万回再生を突破しました。
お客さま搭乗者からは「小学生にもわかりやすかった」「子どもでも最後まで集中して見ることができた」などの声がよせられています。実際に機内で放映した際に「冒頭のピカチュウの鳴き声で歓声があがった」という客室乗務員からの報告も。これらの反響を受けて、ポケモンの担当者は笑顔を見せました。
「今回のプロジェクトは単なるエンターテインメントではなく、安全を守るための大切な映像づくり。難しいテーマではありましたが、搭乗するみなさんが機内安全ビデオを見ようと思えるきっかけをつくれたことを嬉しく思います。これからもポケモンとともに、楽しい空の旅をお手伝いしていきたいです」
ANAとポケモンが力を合わせて紡ぎ出す、空の旅のワクワクはこれからも続いていきます。