ポケモンカードゲーム(以下ポケカ)の盛り上がりの裏側には、「ポケカの遊び場や大会を支えたい」と熱く願う、「ポケモンカードゲーム 公式資格制度」の取得者たちがいます。
この資格制度とは、大会を開催・運営する「イベントオーガナイザー」と、公式大会の審判を務める「公認ジャッジ」を認定するものです。
公式資格をめざすのは、もともとポケカが大好きなプレイヤーたち。「ポケモンカードゲームをプレイして楽しむだけでなく、魅力を伝え、広める存在になりたい」という想いから活動しています。
資格制度・試験がスタートしたのは、2015年。当時は、ポケカを気軽に楽しめる場が今よりも少なく、プレイヤー同士で集まれる場所が限られていたことに、担当者は課題を感じていたといいます。
一方、欧米では、すでにカードゲームプレイヤー自身がイベントを開いたり、ジャッジとして対戦をサポートしたりと、自発的にコミュニティを広げる文化がありました。
日本でも、プレイヤー自身が遊ぶ場を育てていける仕組みがあれば、もっとポケカが盛り上がるかもしれない――そんな想いから、熱意のあるプレイヤーを後押しするための仕組みとして、公式資格制度が始まったのです。
資格を得るための一次試験は、ポケカのルールの知識を問うウェブでの筆記試験。通過すると、二次試験となるオンライン面接に進みます。それに合格すれば、受験者はイベントオーガナイザーの資格が取得できます。公認ジャッジを目指す場合は、試験合格後にジャッジ研修を受講します。
「プレイ経験のある人なら十分チャレンジできる内容ですが、知識だけで合格できるわけではありません。ポケカの魅力をもっと広く届けていきたいという受験者の想いを大切にしています」と担当者は笑顔で語ります。
イベントオーガナイザーに認定された人は、ポケモンカードゲームの自主イベントを「公認イベント」として開催できます。「はじめてのポケカ対戦会」や「ティーチングイベント」など、初心者向けのイベントから活動をスタートする人も。イベントオーガナイザーが公認イベントを開催する際、ポケモン側からはプレイマットや遊び方ガイドなどを提供します。
資格取得を目指す人は、意外にも親世代の人たちが多いといいます。「子どもとポケカで遊んでいたけれど、成長するにつれて子どもだけが離れてしまい、スキルを持て余している親御さんがいるんです。それで『今度は地域の子どもたちに教えてあげたい』と資格を取る。少年野球のコーチみたいな感じですね」
また、なかには「参加できる近隣のイベントがない地域に住んでおり、自分で遊び場を作りたい」という人も。
ポケモンカードゲームを教える、遊び場を見守る、プレイヤーの居場所をつくる。イベントオーガナイザーの活動によって、その遊びの場がどんどん広がっています。
公認ジャッジは、公式大会やイベントにおいて、試合が円滑に進行するようサポートする審判を務めます。対戦中のルール確認やトラブル対応、プレイヤーへの案内や配慮など、ジャッジが活躍する場面は多岐にわたります。
公認ジャッジが活動するフィールドは、小規模な大会から全国大会までさまざま。各地域での公式大会「シティリーグ」では、4〜5人のジャッジが連携して大会の進行をサポートします。2024年には、こうしたイベントが全国で2000回以上開催され、のべ1万人を超える公認ジャッジが稼働しました。
また、毎年5回ほど開催され、7000人以上のプレイヤーが集う大型公式大会「チャンピオンズリーグ」では、1大会あたり200人以上の公認ジャッジが大会の運営を支えています。
全国大会や世界大会を目指して対戦する“競技”としてのポケカは、公正公平に運営される必要があります。公認ジャッジは、より多くのプレイヤーが安全に遊べるようサポートしているのです。「競技から離れてしまったけれど、公式ジャッジとして参加しポケカを支えていきたい」という想いからジャッジを志す人もいるといいます。
「資格取得者には、ポケモンカードゲームプレイヤーの模範になってほしい、と最初に伝えています。教え導く立場になったとしても、先生である前に、いちプレイヤーとして、憧れの存在になってくれると嬉しいですね」
ポケモンカードゲームの魅力を、プレイヤー自身が次の誰かに届ける。そんな連鎖が続くように——公式資格制度は、これからもポケカを楽しむ輪を広げられるよう、進化を続けていきます。