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1. MRI検査を受ける子どもたちに安心を
小児医療の現場には、以前から大きな課題がありました。その1つが、子どもたちがMRI検査を怖がってしまうこと。これを解決すべく、ポケモンはキヤノンメディカルシステムズと共同で、小児向けのMRI検査説明用動画『ポケモンといっしょにMRIけんさのようすをみてみよう!』を制作しました。
MRI検査は、病気や怪我などを患う子どもたちの病状を正しく把握するために必要です。しかし、その検査中は大きな音が鳴り響き、狭い検査機器のなかで長時間じっとしていなければいけません。
実際の検査では、恐怖でなかなか検査機器に入れない子、機器のなかでじっとできずに動いてしまう子が少なくありません。そのためやむを得ず、副反応のリスクがある鎮静剤を使い、寝かせた状態で検査することもあるそうです。
鎮静剤はできるだけ使いたくない、でも使わないとMRI検査を進められない。そんな板挟みの状況が続いていました。
2. 医療機器メーカーとともに課題解決に乗り出す
この状況を打破しようと立ち上がったのが、MRIをはじめとした医療機器の製造・販売を行うキヤノンメディカルシステムズです。子どもたちを安心させるために、医療従事者とともにプレパレーション※用の動画を制作することにしました。
治療や検査に臨む前に、不安感を取り除くための説明のこと
医療現場のほとんどは、独自で資料を用意し、紙芝居や模型などを使って口頭でプレパレーションを実施しています。しかし、これは医療従事者たちの負担が大きい上、子どもたちにうまく内容を伝えることも難しい。
キヤノンメディカルシステムズの担当者は、動画制作を始めたきっかけをこう振り返ります。
「検査に使う製品を提供している当社だからこそ、プレパレーションの課題を解決するための支援ができないかと考えました。特に日本では、さまざまな理由でプレパレーション動画が海外よりも普及していません。小児医療に携わる人たちからの熱い要望もあり、動画制作に踏み切りました」

このような状況を知り、「医療現場で何か貢献できることはないだろうか」とキヤノンメディカルシステムズに話を持ちかけたのが株式会社ポケモンでした。
「私たちは企業理念として、“現実世界と仮想世界を両方豊かにする”を掲げています。ただ、医療分野に自分たちだけで踏み込むのは難しい。そこで、子どもたちに安心してもらえるような動画制作で力になれないだろうかと打診しました」(ポケモン担当者)
3. 子どもたちと誠実に向き合いながら進めた動画制作
そうして誕生したのが「小児MRI検査説明用動画ポケモンバージョン『ポケモンといっしょにえむ・あーる・あい(MRI)のけんさをみてみよう!』」です。
動画制作においてもっとも重視したのは「嘘を付かない」です。たとえば、MRI検査時の音は、大きな音量をごまかさずそのまま収録しています。また、実際の検査の様子を360度カメラでリアルに撮影し、目線は子どもの身長に合わせました。
「子どもたちは、少しでも“説明の動画と違うじゃないか!”と思ってしまったら、もう二度と検査を受けてくれないそうです。それを肝に銘じ、子どもたちが怖がりそうなポイントも、包み隠さずに説明することを心がけました」
4. 目と耳からポケモンたちの応援を届ける
ポケモンたちは、文字やイラストで説明するシーンに登場しています。どのポケモンをどの場面に登場させるのか、表情やポーズはどうするか、丁寧に協議を重ねて決めていきました。

「うごかないでね」と伝える場面では、いねむりポケモンのカビゴンや、いつも木のふりをして動かないまねポケモンのウソッキーを選定。また、磁場を利用するMRI検査室に持ち込めないものを紹介する際は、じしゃくポケモンのコイルが登場しています。
このほか、MRIの大きな音を紹介する場面では、驚いているような表情のピカチュウを見せるなど、ポケモンたちの姿や表情から言葉のニュアンスを伝えられるよう意識しました。

検査の際に聞こえる音を子どもたちに伝えることも、この動画において重要なポイントです。動画の音声にきちんと耳を傾けてもらえるように、ピカチュウの鳴き声が動画の最初から最後まで聞こえてくるようにしました。
「MRI検査の本番中にも、ピカチュウがどこかで応援してくれている気がする」。そういった気持ちが子どもたちのなかに生まれるような動画制作に取り組んでいます。
5. 治療を頑張る子どもたちの味方に
この動画は誰でも気軽に見られるよう、YouTubeで一般公開しています。医療従事者の間で口コミが広がり、MRI検査のプレパレーションで使い始めた病院も徐々に増えていきました。
実際に動画を使用した現場からは「患者さんが自宅でも繰り返し視聴できるので、以前のプレパレーションよりも検査に対する理解が深まっている」といった声も届いています。
また、鎮静剤なしでMRI検査ができるケースも少しずつ増えると、子どもたちの治療に対する意識の変化が見られるようになりました。

鎮静剤を打つと寝ているうちに検査が終わるため、子どもたちは治療に対して受け身の姿勢になってしまいがちです。しかし、鎮静剤なしで検査を受けられるようになると「自分で頑張って検査を受けるんだ!」といった前向きな意欲を持って治療に臨めるようになるそうです。
プレパレーションを担当する看護師からは「“病(やまい)は気から”と言いますが、体だけでなく心のケアにも役立っています」と、効果を実感するコメントが寄せられました。
「ポケモンのおかげで検査ができた」と言ってくれる子どもをひとりでも多く増やしたい――。私たちはこれからも、医療現場の力になれるような活動を継続していきます。