
1. 森林に溶け込むポケモンを探して
東京郊外に広がる手つかずの自然。『ポケットモンスター』シリーズが生まれるヒントとなったのは、そんな環境で、原作者が少年時代に熱中した昆虫採集でした。
作品の「遊び」の原点に立ち戻り、ポケモンを通じて自然に触れてほしい。そんな想いから生まれた企画が『Pokémon WONDER』です。
参加者はポケモンリサーチャーとなって、冒険の舞台である「イナギの森」に調査に出かけます。約4500平米もの広大な森林の中で、まるでカブトムシや野鳥を探すように、自然に潜むポケモンを探していきます。
2. 草むらに踏み込み、水中を覗き込む体験を
たとえばある調査ノートには、このように書かれています。
「紫色の痕跡が点々と続いているのを発見した。跡をたどってみたが、草むらの手前で途切れていた」
この情報だけでは、何のポケモンがどこに隠れているかわかりません。遊び手は広いフィールドを自分の足で歩き回り、時に草むらをかき分け、水の中を凝視して痕跡を探します。このように、森の中を探し回るうちに、おのずと自然と触れ合うことができるのです。

3. ポケモン本来の姿と探す面白さを両立するには
『Pokémon WONDER』における最大のチャレンジは、現実世界の自然の中で「ポケモンらしさ」と「探す面白さ」を共存させることでした。
ポケモンの痕跡を辿って自然に飛びこむ仕掛けづくりの裏側には、企画に共感し、真摯に向き合うクリエイター陣との協力体制があります。
この体験ゲームには、「謎解き」ブームの仕掛け人こと松丸亮吾さん率いるRIDDLER株式会社の惜しみないアイデアが詰まっています。また、『ポケモンGO』グローバルトレーラーなど数々のポケモン関連映像を手がけられたクリエイティブディレクター本山敬一さんの細やかな心配りも不可欠でした。

プロジェクトの過程は、最初から最後まで試行錯誤の連続でした。企画のプロデュースを担当した、株式会社ポケモンの津田明子さんはこのように語ります。
「特に『どのポケモンがどのように登場するのが“あるべき姿”なのか』という点は、議論を尽くしたポイントです。生きものには生態があるので、森にいるのが自然なポケモンもいれば、そうでないポケモンもいる。どれだけ面白い謎や仕掛けを思いついても、そのポケモンにとって不自然だったらボツにすることもありました」
同時に、遊びとしての面白さも追求しています。ポケモンそれぞれの魅力を最大化することが理想ですが、目立ちすぎると「ポケモンを探す遊び」として成立しません。かといって、自然に馴染ませすぎるとポケモンらしさが失われてしまいます。
関係者全員で出し合ったアイデアは100以上。何度もテストを繰り返しては調整を重ね、最終的に「ポケモンらしさ」と「遊びとしての面白さ」のバランスがとれるポイントをすり合わせました。
4. ポケモンが自然と親しむ架け橋に
津田さんが「企画は間違っていなかった」と確信を持ったのは、テストプレイ参加者のお子さんの変化を見たときでした。
そのお子さんは、アリを見ただけで怖がるくらい虫が苦手。しかし、会場は自然の中なので、当然ながらあちこち虫だらけです。
「そんな中、その子が『あそこにポケモンがいそう!』と草をかき分けて自然に飛び込んで行きました。ポケモンを探すことに夢中で、苦手な虫が気にならなかったんだとか。ポケモンの力は、自然と子どもの架け橋になれると感じた瞬間でした」

自然との触れ合いの中にある、いつの時代も変わらない「遊び」。『Pokémon WONDER』を通じて、ポケモンの原点にあるそんな「遊び」を再発見することが、また誰かの原体験につながるのかもしれません。
お子さんはもちろん、大人も童心にかえって、時には自然に親しんでみるのはいかがでしょうか。