INDEX
1. 仮想世界の「ポケモンだいすきクラブ」を現実に
「ポケモンずき だれでも かんげい!」
ポケモンを愛する人々が集まる「ポケモンだいすきクラブ」。これは、1996年発売のビデオゲーム『ポケットモンスター 赤・緑』からゲームに出てくるコミュニティです。

初登場から約8年後の2004年。ポケモンの公式ファンクラブとして、現実世界にも「ポケモンだいすきクラブ(以下、だいすきクラブ)」が誕生しました。
ゲームから飛び出しただいすきクラブは、ポケモンの関連商品を買ってポイントを貯めるWebサイトからスタート。同年末からは、 会員制の子ども向けファンコミュニティとして運営を始めます。

△ファンコミュニティサイトとしてリニューアルした「ポケモンだいすきクラブ」ホームページ
「ゲームの中にあるものを現実でも体験できたら、ファンの子どもたちに喜んでもらえるかと考えたんです」と担当者は当時を振り返ります。
2000年代前半は、インターネットが家庭へ普及しはじめた時期。2006年頃からは、保護者のパソコンを使って遊ぶ子どもたちが増えていきました。そんな時流を見越して、 だいすきクラブは当初から、インターネット上をメインにコミュニティを広げていったのです。
最盛期の会員数は300万人以上。オリジナルミニゲームの配信や、ポケモンのビデオゲームとの連動企画など、ポケモンファンの子どもたちに向けた数々の取り組みを行っていました。
2. ポケモンファンとのコミュニケーションの場として
ポケモンが好きな子どもたちへの情報発信の場として、だいすきクラブはその存在感を強めていきます。その運営にあたって、当時のメンバーは バーチャルの世界とリアルの世界をつなぐ施策にこだわりを持っていました。
代表例が、夏季限定でインターネット上に開設していた「ポケモンだいすきクラブ 夏休み大作戦!(以下、夏休み大作戦)」です。夏休み中の子どもたちに向け、ミニゲームや、その結果に準じて応募できるプレゼント企画などを用意しました。

ミニゲーム結果のランキングがリアルタイムで更新されたり、簡単なチャットができたり。夏休み大作戦では、会員同士のコミュニケーションをうながす仕組みを採用しました。
「今でこそ当たり前ですが、20年前はSNSやチャットアプリがさほど普及していませんでした。 バーチャル上での交流を意識した取り組みは、かなりチャレンジングなものだったと思います」
そのほかにも、だいすきクラブはバーチャル上だけでなく、現実世界での取り組みにも力を入れていました。
たとえば、会員から願いごとを募り、選ばれた願いを叶える七夕の特別企画「ジラーチに願いを…」。スタッフがポケモンたちと一緒に子どもたちのもとへ実際に足を運び、夢を実現するお手伝いをしました。

△ねがいごとポケモンのジラーチが、子どもたちの願いを叶える特別企画
会員限定のリアルイベント「ポケモンフェスタ」を開催したり、全国のファンに会いに行ったりするなど、だいすきクラブを通して現実世界での交流も深めることができました。
3. 会員制ファンクラブからオープンサイトへ
それから時は過ぎ、一家に一台のパソコンから、一人に一台のスマートフォンが広まる時代へと移り変わります。この流れに沿って2012年、だいすきクラブはサイトを大幅リニューアル。クローズドな会員制を廃止し、誰でもアクセスできるオープンサイトに一新しました。

△モバイルデバイスで読みやすいよう、横スクロールの雑誌風デザインに。公式ファンクラブから、オウンドメディアに近い存在へ
そして2014年、だいすきクラブはコンセプトを大きく変更し、 「ポケモン一匹一匹の魅力を伝える」ことを目的としたサイトに生まれ変わりました。
4.「ポケモン×地方」が生み出す新たな可能性
ポケモンたちそれぞれにフォーカスを当てて、その魅力を広く届ける――。そんなだいすきクラブのコンセプトから派生したのが「ポケモンローカルActs(以下、ローカルActs)」プロジェクトです。
これは、ポケモンを通じて地域の魅力を国内外に発信する取り組みのこと。各自治体と連携し、地域に密着した施策や活動に乗り出しました。
このプロジェクトが始まったきっかけは、香川県とヤドンのコラボ企画でした。
「『うどん』と『ヤドン』の音が似ている」という理由から、香川県の担当者との間でコラボの話が立ち上がりました。そうして2015年に誕生したのが、「ヤドン800匹脱走」のエイプリルフールの新聞記事です。

これを契機に、ヤドンと香川県がつながることに。そして2018年に開催されたのが、 だいすきクラブが2014年に公開した特集ページ「ヤドンパラダイス」とのコラボ企画「ヤドンパラダイス in 香川」です。同年12月には、ヤドンが「うどん県PR団」に任命されました。

△ヤドンにフォーカスした特集ページ。オリジナルソングの制作をはじめ、4コマ漫画やミニゲームなども
当時の担当者は「ヤドンと香川県のコラボ企画が好評だったのを目の当たりにして、ポケモンと地方の相性の良さを感じました」と回想します。
「ポケモン一匹一匹の魅力を知ってほしい」という願いと、「各地域の活性化に貢献できるかも」という予感。 だいすきクラブから生まれたこの2つがかけ合わさり、ローカルActsの取り組みが始まったのです。
5. だいすきクラブを受け継いで生まれたもの
だいすきクラブの思いを受け継いだローカルActs。このプロジェクトは少しずつ各地へと広がり、現在は12道県*でそれぞれ活動しています。
*北海道、岩手県、宮城県、福島県、福井県、三重県、鳥取県、香川県、高知県、長崎県、宮崎県、沖縄県

「2004年に現実世界に登場しただいすきクラブは、私たちにとってとても大切なもの。時代が変わっても、ポケモンとファンをつなぐ原点として残していきたいですね」
ポケモンのファンコミュニティから、地域とポケモンの魅力を発信する存在に形を変えただいすきクラブ。今までの経験を活かし、これからもポケモンと現実世界を結ぶための活動を続けていきます。