1. 「ネコカップ」とメタモンの親和性
お皿の上でプルプルと揺れる、愛らしい姿。ごはんやプリン、ゼリーなどを、へんしんポケモン「メタモン」の形にできる「メタモンカップ」は、アッシュコンセプト株式会社(以下、アッシュコンセプト)との協業によって生まれました。
開発のきっかけは、ライセンスプロデュース部の担当者がアッシュコンセプトの「ネコカップ」と「コネコカップ」を目にしたこと。これは、ごはんやゼリー、砂、雪など、さまざまなものをネコ型にできるカップです。

△「ネコカップ」(左)と「コネコカップ」
「コネコカップ」でつくられたプリンは、揺らすとプルプルと揺れ、まるで踊っているかのよう。これを見た担当者は、「この質感はメタモンにぴったりだ」と直感しました。あらゆるものを型抜きできる自由度の高さも、「何にでも変身できる」性質を持つ“へんしんポケモン”のメタモンとマッチします。
「きっと面白いものができるはず!」と、すぐさまアッシュコンセプトへ協業を打診しました。

また、コラボレーションを打診した背景には、企業姿勢への共感があったといいます。
「アッシュコンセプトは、利益だけを追求するのではなく、『デザイナーの面白いアイデアを形にする』という想いを非常に大切にされている企業です。 日常を少し楽しくする遊び心のある製品が多く、そこに私たちのスピリットと通じるものを感じました」
2. ポケモンカードゲームでおなじみ、森井ユカさんとともに
「メタモンでカップをつくりたい」という担当者の提案に対し、アッシュコンセプトからすぐに快諾の返事が届き、製作にとりかかることになりました。
スムーズな進行を後押ししたのは、造形作家・森井ユカさんの存在です。森井さんは以前から、ポケモンカードの券面を彩る立体造形を数多く手がけており、クリエイターとしてポケモンの世界に触れてこられました。
偶然にも、今回の「ネコカップ」「コネコカップ」の原型を担当していたのが森井さんその人だったのです。ポケモンの担当者は、おもしろい縁を感じたと笑います。

△森井さんが手掛けたポケモンカードの立体造形のアート
株式会社ポケモンから、今までとは大きく異なる企画で声がかかった森井さん。その感想を次のように話してくれました。「とても嬉しかったです。メタモンは2005年に、ポケモンカード用を8体つくって以来でした。不思議なもので、立体は一度つくると手が覚えているものです。まるで昨日ぶりにつくったかのような感覚で製作を進めることができました」
立体物を制作する際、ポケモンらしさと作家性を両立するために、造形の監修を行います。しかし、長い年月にわたってポケモンカードのアートに携わり、かつメタモンの製作もはじめてではない 森井さんが原型を担当してくれたことで、安心してお任せすることができました。
そして迎えた試作品のチェック日。アッシュコンセプトの粋なはからいで、ゼリーの入った状態のメタモンカップが披露されました。

「お皿に置かれたカップから、“ぷるん”とゼリーのメタモンが現れたんです。まさに私が思い描いていたメタモンのイメージそのものでした。『これは多くの人に楽しんでもらえる』。もう、試作品を見た瞬間に確信しましたね」と担当者は興奮気味に話します。
3. ユーザーの想像力も「へんしん」する
森井さんは、メタモンカップに込めた想いを教えてくれました。
「ユーザーのみなさまによって、予想外の使い方が生まれるのを楽しみにしながら作りました。長年愛されるアイテムになれば、とてもうれしいです」
メタモンカップが2025年5月に発売されると、SNSでは想定以上の大きな反響がありました。定番のプリンやゼリーはもちろん、ごはんをメタモンの形にしたり、カップで氷をつくってそうめんに乗せたり……森井さんの願いどおり、私たちの想像を超える使い方が次々と投稿されたのです。
「『何にでもなれる』というコンセプトが、ユーザーのみなさんの創造力によってさらに拡張されていくのを見て、本当にうれしくなりました」(担当者)

4. あらゆる人々の日常にポケモンを
ライセンスプロデュース部は、企画を推進する上で、「面白いか、面白くないか」「ポケモンの魅力を広げていけるか」を大切な判断基準としています。
また、こうしたライセンスを通じた取り組みが担う重要な役割は、「ポケモンファンではない人々との接点をつくること」だと担当者は説明します。
「スーパーマーケットや雑貨店といった日常の中にライセンス商品が存在することで、ポケモンを知らない人にも興味を持ってもらうきっかけが生まれます。こうして新たなファンが生まれることが、ポケモンを数百年続く存在にするという、私たちの大きな目標につながっていくと考えています」

ポケモンと、すばらしいものづくりが出会うことで生まれた「メタモンカップ」。手にとった人たちの数だけ、メタモンは「へんしん」を遂げました。
これからも、思いもよらない使い方が生まれ、より多くの人々にワクワクが伝播していくことを期待しています。